[事実関係]
経常利益が前事業年度の経常利益より6%低下したことをもって、役員給与を減額した同族会社がについて、原処分庁が経営の著しい悪化等に該当しないとし、減額改定前の月々の支給金額の内、減額後の月額給与金額を超える部分の金額を損金不算入としたことにつき、裁決は、減額した事業年度の売上高、経常利益は過去の事業年度と比べ遜色がないこと、役員給与は業務目標を達成しなかったことに基づくものであるとして原処分を維持した(平成23年1月25日裁決)。
[解説]
役員は、金融資本家産業資本家との資本関係に基づいて労働者からの搾取を行い内部留保を蓄積するから、他の資本家に自己所有の労働者が搾取され、業績、資金繰りが悪化した場合、現実には配当及びその原資である内部留保を減らさないが、まずは配当及び利息を減額する義務がある。
現実には配当や役員給与よりも先に労働者から賃金が絞られているが、労働者は生産手段を持たず、肉体と時間だけを売っている。役員は、労働者を生存させることを、生産関係上、資本家との資本関係上しなければならない。
目標というのは効果を期待しての目的論であるから、それが達成できなかったからといって、給与を下げる原因とは生産関係上なり得ない。役員が株主でもある場合、労働者の賃金を絞って内部留保を蓄積し、役員報酬が労働者より高額である場合、役員報酬が配当を役員報酬という名目で支払って損金算入しているという問題が成立しうる。役員が株主である場合にも、金融資本家との資本関係から役員の自由意思に関係なく役員給与を下げざるをえない。
減額された金額で生存を維持せざるを得ないから、減額改訂月以降の月の月額税法上の役員給与も、減額された後の給与である。零細法人の場合、現実には代表者も労働者と同じ業務を行っていることが多い。減額された後の金額が、減額改定前においても直ちに役務の対価として妥当な額としての属性を込め、減額後の金額を超える部分の金額を役員賞与として損金不算入にすることは、資本家による搾取を正当化することであり、生産関係の面からの事実認定、問題提起を欠いていることである。