民法上の組合を通じて新株予約権を取得した者がそれによる利益を益金に計上しなかったことから、原処分庁から指摘され修正申告に応じたが、原処分庁から過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから、請求人は、新株予約権取得にかかる収益は、組合事業による利益の分配であるから、それについて規定する法人税基本通達14-1-1の2但し書きが適用されるものと解釈したとして国税通則法65条4項の正当な理由があるとして処分の取り消しを求めたが、裁決は、組合からの分配を経ないで利益として法人税法22条2項により益金算入されるものであり、税法の不知、法令解釈の誤解は請求人自身の事情であるとして正当な理由があるとは言えないとした(平成20年7月24日裁決)。
全ての者は、利得を得る前提として出資に応ずることをせざるをえない。事業体は、合意すなわち意思の合致によって成立するものでもなければ、契約を待って成立をするものでもなく、出資によって成立するから、任意組合という属性を与えさせていても、出資者に出資するしないに自由意思は存在しない。利益は天から偶然降ってくるものではない。出資を行ったことにより、新株予約権を含めた株主であること、すなわち資本関係を土台として搾取利得の源泉となる資産を取得し、組合側に分配についての自由意思の介在なしに、分配を待たず、請求人が当該新株予約権を取得するまでに、組合が蓄積してきた労働者からの搾取利益を得て、請求人側の金融資本家のような第三者との資本関係を土台に、請求人の自由意思の介在する余地なく、法を媒介に権利を取得するプロセスから、配当を得た場合の原因となる資本関係、経済関係の存在は説明がつくことである。
知っていたか否かは本人以外から見れば方便であって、知っていたか否かという唯心論に関係なく、資本関係、経済関係が形成されている以上、所得を得ていることであり、それを土台に課税が行われるものである。信義誠実という唯心論に基づいて課税は行われるのではない。確かに納税者は、百科事典並みの知識を有しているわけではないし、知り得たとしても納税者がした推論と現実に行われた処分とが国家を所有する資本家との資本関係、経済関係を土台にありうることである。
国家を所有する資本家が経済関係を、原因となる事実関係とそれを土台にした問題提起を全く採り上げられていないわけではないように見えるが、租税は反対給付なしに一方的に徴収される暴力を媒介にしたものであるから、修正申告をさせざるを得ない、納税者がそれに応じることをせざるを得ない場合や、更正処分を行う場合には、修正申告を強制する理由、更正処分を行う理由を納税者の知っているか否かに関わらず、納税者との経済関係上、修正申告を強制するプロセス、処分を行うプロセスの中で付記する義務があるのである。賦課決定処分の取り消しの原因となる事実があるとすれば、納税者の決算、申告を土台に処分を行ったプロセスにおいて、全ての事実を摘出し、問題提起を行わなかったという資本家所有の国家の手続義務の不履行であろう。