[事実関係]

 土木建築の請負を行う法人が、請求人の休日に当たる平成21年1月10日から成人の日である12日までの2泊3日で、代表取締役、請求人の使用人10名、外注先21名が参加して行った総額8,000,000円の海外旅行につき、全額福利厚生費として損金算入したところ、従業員に係る本件旅行費用を従業員給与として源泉所得税の告知処分を行った。

旅行不参加者への金銭の支出は行われていない。

裁決は、企画立案、主催者、旅行の目的、規模、参加割合、使用者や従業員の負担額等総合的に考慮すべきであるが、参加従業員の経済的利益すなわち使用者の負担額を重視すべきとして、請求人が負担した従業員一人当たりの会社負担額が、課税庁側が提示した官公庁から委託を受けた調査会社の資料によると、一人当たり社員旅行総額の平均が平成11年7月、112,421円、平成16年3月108,000円、平成21年12月81,154円、内会社負担額69,089円、74,000円、56,889円であり、他の法人の会社負担額を大きく上回る多額なものであるから、少額不追求の観点から強いて課税しなくてもよいという根拠とはならないとした裁決がある(平成22年月17日裁決)。

[解説]

 会社負担額一人当たり18万3,000円の海外への社員旅行の費用が福利厚生費として認められた裁決がある(平成3年7月18日裁決)。

一方、一人当たり19万2,000円の国内旅行について行った給与課税処分が維持されたものもある(平成10年6月30日裁決)。

資本家が、金融資本家、産業資本家との資本関係に基づいて、内部留保せざるを得ない労金額に達するまでの、労働者に労賃を与えることにより、労働者自身の経済を土台に労働者の生存を維持させ、労賃搾取による剰余利得を得るだけの生産量を産み出させるのであるが、生産手段を持たない生命肉体を提供するだけの労働者、資本家の子供を産む女性、資本家所有の労働者の子が、労働者の労賃だけでは、労働者の肉体、生命、労働者の生命、肉体となる土台となる経済が、資本家の内部留保に対応する生産を行い得ない場合に支出する費用が福利厚生費である。

資本家にとっては、福利厚生費は、投資によるリターン率の悪い支出である。労働者が資本家が提供する経済利益を受け取る意思があるないに関わらず、生産関係上、支払わざるを得ない費用で、内部留保を資本関係から必要とされる水準を維持しうるところまでの費用を構成するものの1つということになる。

しかし、社員旅行の場合、社員旅行を行うことによって休日が奪われ、肉体が疲弊して旅行明けに労働して肉体損傷、商品、役務提供の瑕疵を生ぜしめることもありうる。

社員旅行は、労働者にとっては、休みの日に資本家や経営者の顔なんか見たくねえよ、そんなものやってくれなくていいから、もっと金よこせと言いたいところであるが、生産関係上、拒否できないものということになる。

労働者は、生産関係上、参加せざるを得なかったにも関わらず、課税までも受けている。資本関係に基づく内部留保の蓄積から福利厚生費の損金算入が否認されて、給与課税処分が行われたと見ることができる。