[事実関係]

 前代表者の相続人が退職金の一部を受領しなかったとして、相続税の課税財産として申告した退職手当金等について、相続税の法定申告期限後に退職金算定根拠に誤りがあったとして、相続税の更正の請求をしたが、課税庁に更正を行う理由がないとされ、裁決も、退職金債務免除の意思表示があったとすれば、退職金を遡及訂正するのではなく、新たな法律行為により退職金の支払義務の免除があったと解するのが相当であるとして、原処分庁の更正する理由がないとする通知処分を相当とした事例がある(平成20年8月6日裁決)。

[解説]

 平成17年5月30日の臨時株主総会で死亡した前代表取締役(相続開始日は16年12月)の退職金支給の決議により確定したが、平成18年5月15日の取締役会で17年5月期決算訂正の中で、退職金額の計算に誤りがあったとし、18年5月期退職金の計算誤りに当たるとする金額を前期損益修正益として計上し、確定申告を行っている。経営者は、産業資本家及び金融資本家との資本関係から労賃を絞って金融資本家、産業資本家に分配しうる内部留保を蓄積せざるを得ない。

請求人が発行済株式全てを所有する資本家であって、資本関係から経営者、役員名義でその自由意思により退職金を変更することはできず、経済関係を土台とした債権債務に変更があったとすれば、搾取利得につき、損益修正するしないに自由意思はなく、所得を計算し申告するしないに自由意思はなく、商法上、税法上の行為を行って社会に認めさせざるを得ない。

請求人は、本件被相続人の死亡後、3年以内に実際に受領した金額を退職手当金として主張する。退職金は、生産関係上、役務の対価である給与であって、法人資本家の側の一方的な事実関係、恣意により退職金債務の額を減額することはできないとすることに破産関係法によって社会に認めさせることに成功している。

現実には、資本関係、経済関係から退職金を受け取る側が債務免除を行わざるを得ないのであるが、現実には債務免除の通知に関する法律行為を行う行わないに自由意思はなく、 資本家が法律行為を行わせることによって、退職金を受ける側が当該債務免除をせざるを得なかったという経済関係の変更を社会に認めさせる。

よって、債務免除に係る法律行為の欠缼があれば、経済関係上、資本関係上、債務免除を行わざるを得なかったとしても、それを社会に認めさせることには成功していない。本事例の場合、退職金支払義務に変更があったとはいえないであろう。