[事実関係]
医療法人が元社員らに支払った退職金支払債務及び出資持分の払戻請求訴訟における和解に基づき支払った金額を特別損失としたところ、退職債務は既に計上済であること、出資持分払戻金額とこれらを控除した残額を資本等取引に該当するとして損金算入できないとして行った更正処分について、異議審理庁が監事が退職金を受け取っていないことを根拠に退職金の損金算入否認した以外は、所得税法25条を根拠に原処分を維持した事例がある(平成23年7月5日裁決)。
[解説]
平成8年に損金算入済の退職金は、前代表者が受領し、退職した社員且つ監事の者には行き渡っていないことから、前代表者への仮払金と認定した。
現実には使用人であっても、使用人兼務役員となれない者、使用人役員の給与は、商法、税法を媒介に、日割りで確定するものではないと社会に認めさせることに成功したが、退職金は、給与であり、労働期間に応じて日割り確定するものであり、退職までの給与に相当する金額を法人資本家に前貸ししてきたものである。退職金債務が支払われていなければ、遅延損害金が成立しうる。
和解金は、労働者から搾取した後、生産関係上、支払わざるを得ない金額として支払った。搾取した後の金額を損金に計上したもので、搾取利得相当分は損益に計上されたのと同じである。
定款には、退社した社員は、出資金額の払い戻しを請求できるが、剰余金の払戻金は請求できないとある。 和解の前提となる経済関係、退職金債務及び定款記載の権利義務関係が消滅したか否かを当事者間の意思に関係なく、訴訟当事者間の資本関係、生産関係、経済関係から権利義務関係が規定し直され、それを司法を媒介に認めさせた。
監事の持分の贈与については、現実の贈与があって、それを株主総会で認めさせ、株主総会で確定した権利義務が、司法によって形成し直された。退職金の総額は、生産関係を土台に、株主総会で確定し、訴訟によって確定し直された金額であって、資本金は退職金債務の弁済である。
和解金中、監事の退職金相当分は、退職金、各人の出資金に相当する部分の金額は、資本等取引であり、その残りの金額は、退職金債務に関する遅延賠償金以外の部分の金額は、資本関係を土台とした剰余金の「みなす配当」とする見方が成立しうる。