[事実関係]

納税者が、被保険者を法人の役員とする、保険期間3年又は5年、死亡保険金の受取人を法人、満期保険金の受取人を法人役員とする養老保険を起因とする役員の満期保険金の受取につき、当該保険料を収入から控除して保険料一時損金として確定申告をしたところ、法人負担分については所得から控除できないとして更正処分が行われ、最高裁は、法人が保険料として経理した部分の金額については所得の金額から控除できないとして原審に差し戻した(最判平成24年1月13日)。

[解説]

法人は、設立登記するしないに自由意思は介在せず、登記という商法上の行為を媒介に経済利益を法律上の利益として社会に認めさせるから、法人と個人は別個の課税事業者である。

保険料の支払いは投資であり、保険会社の資本家は、子会社の資本家や産業資本家に保険商品を購入させ、現金を使わせて資金不足にさせ、金融資本家に借入をさせる。死亡保険の受領については、保険会社の資本金と資本家所有の法人との間の経済関係、資本関係の問題であり、購入会社の資本が債券を購入し、労働者を搾取して、その残額を保険金として払い戻す。満期保険金の受取については、保険会社の資本家と資本家所有役員個人との資本関係、経済関係の問題である。

役員は、国際金融資本の代理人たる労働者であり、法人の資本家に投資されており、両者間には資本関係が存在する。資本家との資本関係、生産関係により、労働者を搾取して内部留保を蓄積せざるを得ない。搾取を行ったことに対する対価を、保険金で支払ったとすれば、当該役員の給与所得を構成するという見方も成立しうる。

しかし、資本関係、経済関係に基づいて保険契約を成立させ、資本関係、経済関係を形成してきたのであるから、全ての所得において言えることであるが、偶発所得なるものは存在しえないが、偶発ではない反復継続しない一回切りの収入を一時所得とすることを法を媒介に社会に認めさせることに成功してしまっているから、法に基づいて所得を申告するしないに納税者の自由意思は介在しえず、判決は、当該保険金収入を一時所得とし、その収入を得るために支出した金額については、支払保険料の内の役員負担分、すなわち、法人が貸付金処理をした部分の金額であるとした。

保険会社の資本家と法人資本家との経済関係、資本関係、保険会社の資本家と役員個人の資本関係、法人の資本家と役員との資本関係、生産関係、法人資本家と役員は経済関係、資本関係、生産関係は介在するが、経済上、さらに税法上、別個独立の存在であることに鑑みれば、当該保険金収受の現実に源泉となったのは、支払保険料中の役負担分の金額である。

1審、控訴審判決は、所得税法34条、同法施行令183条2項の規定の文言を重視すると、所得者以外の者が保険料等を、所得者に対する給与課税の有無にかかわらず、控除できるものと解するのが「自然」であると、神様の力を借りて、土台となる経済関係の事実認定の全体化を放棄して、上層の法律の字句、現象面だけを追って、当該養老保険の満期保険料が一時所得となる場合、所得者以外の者が負担した保険料も控除できると、およそ法を司るプロとは思えない判決を下している。