[事実関係]

 20年1月~21年1月に決算賞与を計上し確定申告を行った室内清掃器具の製造販売輸出業を行う法人が、各決算賞与の支払われた日の属する事業年度の損金に算入されるとの更正処分を受けた事例につき、裁判所は、就業規則や労働協約に賞与に係る定めがないこと、決算賞与の決定は、各係争事業年度終了後であるとして更正処分を維持した(東京地判平成24年7月5日)。

[解説]

 就業規則及び労働協約は、株主総会や取締役会において労働者にとって不利益変更はできない。

労使双方が生産関係を土台に問題提起して文書又は口頭により労働者の利益となる改正を行うことは妨げない。

税務において、資本家は、既成の経済事実、生産関係を帳簿に記載して所得を算定し、申告をすることに自由意思は介在しえないが、司法と異なり、契約書、請求書という文書による証拠に基づく決定を行うことを社会に認めさせることに成功していない。資本家との資本関係に基づく法人税法施行令においては、就業規則や労働協約に定めがあれば、支給予定日と通知をした日の遅い日の属する事業年度の損金とされている。

就業規則や労働協約に規定がなくとも、賞与支給日に在職しているか否かに関係なく、売上、生産に対応する労働力の提供があれば、生産関係上、賞与支払いは義務である。事前に計算方法を決定し、労働者に通知しているのであるから、賞与の支払いは義務である。

資本家の所有物である行政は、各人別に同時期に賞与の支給を受ける使用人に通知し、事業年度末日後一ヶ月以内に支給した場合に、通知した日の属する事業年度の損金をするとしている。賞与も日割りで確定し、使用人は、資本家の臨時という方便により、労働者は支払いを受けることを待たされているのである。

当該賞与は、決算日後1ヶ月以内に支給されずに、翌事業年度の3月に支給されている。支払いをせずに、支払義務全額を後回しにしておいて、租税負担を免れて内部留保している事例である。賞与支払義務を支払いの土台となる生産関係に基づくにしろ、生産関係を土台とした労働協約や就業規則に根拠にするにしろ、損金に算入される時期は、賞与が現実に支給された日である翌事業年度の3月ということになる。

利益調整の意図があったか否かは問題として成立しえない。法定福利費は、現実には、社会福祉という方便による租税であり、その点に鑑みれば、給与所得と併せて各事業年度末に確定するが、法は、各月末に債務が確定することに成功しているから、賞与に係る翌事業年度の損金ということになる。