日本の企業の内部留保は、名目上2010年において、491兆円、内、資本金10億円以上の大企業は、266兆円となっている。
例えば、トヨタは、2004年の内部留保金額が6兆5000億円であったのが、2011年には13兆8600億円となり、その一方で一人当たりの人件費は220万円減少している。
ブルジョア学者は、内部留保から設備投資を行わなければならず、内部留保の相手勘定は、現預金だけではなく、事業用資産を売却すれば事業が継続できないから内部留保の全てを人件費に回すことができないという。しかし、大企業の設備投資額は減少し、投資有価証券勘定が増加していることは、以前述べた通りである。さらに、設備投資を行った後の大企業の現金残は、2012年3月現在215兆円、例として取り上げたトヨタも平均して2兆円前後の現金残を有している。
一方、資本金10億円以上の株式配当は、2001年の3倍に増加し、役員報酬は10%増加している。2009年12月期のキャノンは、当期利益1,316億円に対し1,358億円の配当を、ブリヂストンは、2009年12月期に当期利益10億4,300億円に対し、125億4,800万円の配当を支払っている。
生産関係上、人件費を支払った後の当期利益から分配されるというプロセスの配当金に対し、人件費が劣後してしまっているのである。給料を払う金がないというのは方便なのである。こうしたデータを持ち出すと人件費を払っていたら中小企業はやっていけないと、「大企業」の資本家が言うのである。国際競争力の激化、低下云々は方便である。人間には、競争本能などという属性は備わっていない。国際競争力とは、戦争力である。日本は、2010年に4兆6,826億円の軍事費を支出し、世界第6位である。米軍基地に対し6,729億円支払っている。2011年3月31日に今後5年間に1,881億円支出することが国会で承認されている。海上保安庁の費用、旧軍人の恩給を含めると世界第二位の軍事支出である。軍事支出の原資となる国債を購入する金があって、国際競争力がないなどとは言わせない。