経済関係は人の意識とはかけ離れたところにある。これはそのとおりである。しかし、説明することが困難なものでもなければ、法則としてとらえたところで完結してしまうものでもない。ましてや本能や属性として人間に備わっているものではない。意識の前には物体としての存在がある。生存命令の原因となるものは、既存の動植物の生存、すなわち、生々しい弱肉強食の経済関係から死への過程である。弱肉強食の経済関係と死への過程を見て、人間は、動植物の狩猟採集を行ってそれを食べ自己の肉体を製造したのである。

個人の肉体だけでは狩猟採集には限界がある。女を所有して子孫を作る。他の男と女を巡る奪い合いが展開される。子孫を労働力とする。狩猟採取量を拡大しないと、労働力と労働力を産む機械が死んでしまう。捕獲物の略奪、狩猟用具の略奪を行う。それだけでは、自己と自己の産む機械と自己の労働力は肉体を製造できない。道具を奪われた者を奴隷として狩猟採集に従事させ、それでも足りなければ、栽培して再生産する。そして生産したものを搾取する。沢山生産しなければ、搾取の源が死んでしまう。

生産の拡大には人手が足りない。労働者に子供を産ませ、労働力を殖やす。搾取に基づく労働者の反発は武力や宗教で鎮圧する。生産の拡大には、肥沃で、且つ広大な土地が必要となる。戦争により領土を拡大する。広大な土地と労働力により分業制が発達する。分業制はより高い搾取を実現する。土地所有者は、現場の生産労働には参加せず、指揮監督に当たる。やがて、生存に必要のない物を作らせ、労賃を搾取し、そこに価値という属性を与え、必要のない物を高く売り、労賃を削減し、搾取して貨幣を蓄える。蓄えた貨幣で他から、必要のないものを再生産して労賃を搾取するか、搾取の源となる商品を安く購入し、仕入先にそこの労働者の賃金を搾取させ、第三者に販売する。搾取により貨幣を蓄えた者は、他人に貨幣を貸したり、投資したりして、利息、配当という方便を用いて搾取することを覚えた。つまりは、法人の内部留保の原因は、産業資本家、金融資本家への支払手段である資産の購入、資本家にとって、内部留保の原因となるものは、搾取の源泉となる労働力、会社資産の購入とそれらの維持補填と再生産である。