移転価格税制において課税庁の要求した書類の提示がなかったことによる推定課税を納税者が提訴した事例で、東京地裁は、課税庁側の推計課税を支持する判決を行った(東京地判平成23年12月1日)。
課税庁が納税者に対して独立企業間価格算定に必要な書類の提示を求めて、納税者がそれに応じなかった場合には、他の資本家は、課税庁に推定課税をしなければならないと命じている。
それでは提示がな方場合には即推定課税を行わなければならないかというとそこにはいくつか問題がある。
推定課税は、納税者は自由意思の介在なしに自らの経済関係を帳簿書類に記載し確定させており、その確定した経済関係を土台に、他の資本家が、経済利益を徴収する権利を取得し、税法によってそれを認めさせ、属性を与えて経済関係を作り変える行為である。当該納税者のした経済行為自体の存在は消滅させてはいないが、税法によって作り変えられた経済関係の上では当該法人の経済関係の全体化を止め、当該納税者の経済関係からは乖離したものとなっている。課税庁が納税者に提示を求めた書類が、関係会社間の経済関係を全てピックアップして平均搾取率から乖離しているという問題提起したことについて、事実関係の洩れや誤りがないかの確認、問題の建て方が恣意的でないか、問題提起に漏れがないかについての確認するプロセスの中で必要である書類か否かが問題となりうる。
提示を求めた書類の提示がなかった場合、既に提示された書類又は未だ提示を求めていない書類の中に、事実関係を確認できる方法がないか、確認しうる方法を全てピックアップしてその全ての方法で事実関係の確認をし尽したかどうかも問題となりうるのである。