シンガポール子会社が行った株式譲渡益につき、内国親法人の益金算入を行った更正処分がシンガポールとの租税条約に反している旨の訴えにつき、最高裁判決がある(2009,10,29)。

法人は登記するしないに自由意思はなく、登記を通じて経済上の権利、利益を社会に認めさせることに成功していることに鑑みれば、内国法人もシンガポール子会社も各々別個独立した法人である。よって、双方が課税を受けたとしても経済上も法律上も二重課税云々の問題は生じない。シンガポール法人が日本に恒久的施設を有していなければ、日本の課税当局は、シンガポール法人に課税することはできないこととなる。

税務上の所得及びその上の税額は、経済上の利益、権利を、決算を確定することに法人の自由意思の介在する余地がなく確定決算をすることによって社会に認めさせるという確定申告を土台にしている。親子法人間には、当該ケースも含め、全てのケースにおいて労賃搾取、内部留保蓄積命令は存在いうるが、シンガポール法人において、配当を確定させて支払ったことについての計上がない。資本関係を土台に配当の原資となる現金留保の所有は確定しているが、送金することを確定させていない。

移転価格税制が問題となるケースでは、現実に経済利益の移転があるのに対し、当該ケースでは現実の経済利益の移転がない。

代理人たる課税庁の徴収目的論から課税対象利益を配当したとみなす、又は擬制配当とすることが「自然」であるとする解釈は、属性論であって、関係会社間の経済関係を説明していないし、経済関係から乖離している。しかし、シンガポール法人には、事業に係る費用の計上がないから、配当課税はできないが、事業実体がないものとして特定外国子会社の適用除外はないとされ、親子関係法人間の労働力搾取に係る経済上の資本関係、生産関係を基にタックスヘイブン対策税制が適用されたのであるとみることができる。