ストックオプションの権利行使益を給与所得とする最高裁判決(最判平成17年1月25日)が出てから、6年近く経過するが、ストックオプションを権利行使して株式を取得した価額と取得日の株価との差額は、一時所得ではない。
資本家と使用人の生産関係を土台にして、使用人は、購入権という経済利益を得た後、法律行為を媒介に株の法律上の所有者となって、購入権を得てから法律上所有者となるまでの間に法律上の資本家が搾取した金額の一部込みの金額を給与とすることを契約によって社会に認めさせたのであって、使用人が給与を前貸ししている関係であって、使用人が株式を取得した日の株式の時価が給与の金額であり、労働債務は、株式の時価である。有価証券の譲渡は労働債務の代物弁済である。無償譲渡を第三者に売ったとして収益を擬制し、そこから給与を払ったのではない。時価と権利行使の金額との差額は、賞与である。相手勘定は有価証券である。尚、権利行使時に、法人の会計上の仕訳として、新株予約権/有価証券、有価証券/有価証券売却益の仕訳が建つ。
株式の値上がり益は偶発したものではない。株式への実体のない属性付与とその土台である搾取による経済関係という土台があるのである。株式の付与は、労働債務の代物弁済を構成する。よって、権利行使した価額と株価の差額は給与所得ということになる。株式の取得価額相当を給与としての属性を与え、時価との差額につき贈与又は別の費用であるという属性を与えるという二段階説の方が会社と使用人の経済関係から離れた詭弁であると思われるのだ。
子会社の社員が確かに、親会社も子会社も自由意思の介在なく法人登記を行って、利益を享受している各々別個の法人であるから、子会社の使用人と親会社の間に雇用契約がない。親会社は、子会社に資本関係を土台に法人登記を行わせざるを得なくさせ、現実には親法人の所有者、所有者が法人である場合にはその法人を所有する個人、金融債権者と生産関係が存する子会社の使用人に、子会社に、配当や利息の源泉である留保現金を蓄積させることを土台に決算という法律行為を通じ、子会社資本家、当該資本家が法人である場合にはその法人を所有する個人とストックオプション権利属性を付与された労働者の生産関係があることを社会に認めさせることに成功した。
株式の対価であるのか否かが問題となるのは、雇用関係に基づいて給与を支払っている子会社であって、親会社の株式をストックオプションに係る権利行使によって取得した者と親会社の間には雇用関係がないから給与所得ではないとの主張は、問題として成立しえない。親会社の金融資本(投融資している資本)との雇用関係があるとしたとしても、生産関係を土台とした架空資本の付与であるから交付を受けた側は給与所得ということになる。