移転価格税制における原価基準法とは、取得原価に非関連者間取引において考えられる利益率を加算した額をもって、当該国外関連者取引とするとしている。しかし、比準法人における購入価格は、仕入業者の製品を安く買い叩いた結果の購入価額であり、比準法人が非関連者に販売した価格も原価に相場とされる利益率を上乗せした価格ではなく、他社より賃金を絞って安く売却しているか、更に経済関係上強い立場の取引先に安く買い叩かれて売却に応じているのだ。価格算定方法の前提がまるで現実と逆である。原価に他社と同程度の利益を乗せて販売している事業者などいないのである。学者や税務行政や裁判所が原価基準法なるやり方で当該法人の取引価格を決めたら商売をやっている人間は腹を抱えて笑うであろう。比準法人の同業他社の販売価格は価値を反映しているのか。市場で取引された商品には、価値という属性など備わっていないのである。内部留保の命令にしたがって、商品に価値という属性を与え、それを物象化して売却しているのだ。