役員と法人の生産関係は、委任契約であって、使用人報酬については、日割りで労働の対価が確定され、給与支払日まで会社に前借りされているのに対し、役員報酬は、日割りで役務の対価が確定するものではなく、たとえ使用人兼務役員であっても、税法は、締め後給与の未払計上を認めていない。このことから、臨時に支出される賞与については、役員分使用人分とも役務提供に対する対価ということになるであろう。特に、使用人兼務役員であろうと代表取締役であろうと、使用人と同じ労働をしているような生産関係を構成する零細法人などは、現実には、その報酬については日割り確定、賞与についても役務の対価、労働の対価ということになるであろう。

これに対し、使用人給与、非正規雇用の人件費を搾取して内部留保が分厚く累積されている大企業は、零細法人と生産関係が異なるのである。平成18年の改正により事前に税務署に届出をすることにより、役員賞与が法人税法上損金に算入されることとなったのであるが、このことにより、役員賞与を高額な役員報酬と共に損金算入することにより、法人の所得、法人税額を減額するとともに、役員賞与を収受した側も所得税法上の給与所得控除が受けられることとなる、いわゆる二重控除が問題となったところである。これにより、高額な役員報酬、役員賞与を受ける大企業の役員と労働者の間の格差が税制面でも大きくなったのである。

にもかかわらず、日本税理士会連合会らは、国際競争力の強化を方便に役員賞与の損金算入の要件を緩和しようとする平成24年税制改正の要望書を出すという。役員賞与は、役員報酬と同様に役務の対価には違いがないが、大企業と零細法人の生産関係を全く考慮に容れていないのである。正規非正規使用人の給与を絞って、役員報酬賞与金額との格差が大きい法人、受け取る側が益金不算入である大企業に対する株式配当性向が高い法人は、使用人からの搾取分が株主配当、役員報酬賞与の現実の生産関係上の実体関係を超える部分に充当されている場合、現実には内部留保が分配されているとみることができるであろう。利益処分として課税されたくないのであれば、ブルジョアの経費である略奪軍事費への支出をなくせばよいのである。