今回の国税通則法の改正について、納税者の権利章典が削除されたのは、いわゆる“毒林檎“が片づけられ、餓死させる方法に切り替えてきただけであって、税務署と納税者の関係が前進したわけでも後退したわけでもない。ブルジョア学者が勝手に騒いでいるだけである。

問題となるのは、下記の内容である。平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税については、更正の請求の請求期限が改正前は法定申告期限から1年であったのが、法定申告期限から5年に延長された。平成23年12月以前に法定申告期限が到来する国税については、更正の請求の請求期限が徒過した課税期間に係るものについては、増額更正ができる期間内に更正の申出書の提出があったときには、調査して検討した結果、減額更正をするとされた。

更正の請求に際しては、司法審査と異なり、証拠主義が採用されていないにもかかわらず、事実を証明する書類の提出が義務づけられた。添付書類の義務化の規定は、平成24年2月2日以後に行う更正の請求から適用される。減額更正については職権で更正しなければならないとする規定(24条)は、存続しているものの、所得等の減額事由があった場合、改正前は、嘆願書を出さなくとも所得の減額を認めさせる方法はあり、必ずしも調査が行われるとは限らなかったのだが、今回の改正により納税者の側からお辞儀をすることが求められた。

尤も、24条の職権更正の「する」、国税通則法70条2項の「できる」は「しなければならない」という強制のマストであるから更正の申出書の提出がなくとも、税務調査等で知りえた事実に基づく減額更正についてはそれを行わなければならないのであって、調査があってもなくても、所得等の減額事由が存在することを帳簿等によりアピールできる構造にしておかなければならないであろう。

増額更正できる期間については、改正前の3年のものについては5年となった。ナチスドイツの租税調整法を参考にして立法された国税通則法は、納税者に選択権を与える形をとって、調査権、徴税権が強化されたのである。

さらに、申出のとおりに減額更正されなかったとしても不服申立を行うことができなくなったのである。すなわち、納税者の自己責任を強化する規定となっているのである。更正の請求の範囲については、当初申告要件から外されたものとして、受取配当金等の益金不算入、外国税額控除等があり、大企業有利なものとなっている。更正の請求の範囲に係る改正は、所得税については、平成23年12月2日の属する年分以後の所得税、法人税については、平成23年12月2日以後確定申告書の提出期限が到来する法人税から適用される。