例えば、独身者が東京で、生活するに当たっては、贅沢な生活を送らなくとも、家賃食費等の衣食住に係る費用、水道光熱、通信費の生命を維持して労働をするのに要する費用、さらに、社会、政治、経済を批判するだけの知識や情報を得るのに要する費用等を加えると最低でも手取り月々23万円から24万円の収入が必要になると思われる。
にもかかわらず、給与所得に係る源泉所得税の税額表によると、月々の社会保険控除後の給与は、88,000円未満の場合には源泉徴収されないだけで、88,000円以上になると、生活費について課税を受けるのである。給与所得控除と基礎控除の金額を12か月で割った金額も、すなわち、非課税の生活費も、年収180万の労働者の場合で言うと、91、666円、年収360万円の人で136,666円である。現行税制は、あまりに労働者の現実の生活費と乖離している。この給与所得控除や基礎控除も年末調整によって行われ、それまでは、労働者は、国に税金を前貸ししているのである。税金は、労働者の生活費にまで襲いかかるのである。給与課税の非課税枠は、月23万から24万円程度に引き上げることが急務である。
この税金の減収分に対しては、法人に雇用税を課すという方法も考えられうるが、労働者の賃金を圧縮して、雇用税の負担を免れ、さらに内部留保の拡大を図ることも考えられうる。確かに、内部留保といっても、売掛金の回収、買掛金残高、減価償却費等現実の資金繰り残高とはイコールではない。
しかし、業績に関係なく、商法上の役員(使用人兼務役員含む)、法人税法上の役員、特殊関係使用人の給与、基本月給45万円以上の使用人を控除した使用人(契約社員、後述の短時間労働者も含む。外国人労働者含む。)の月額給与又は時給の平均値(賞与を含めないところの金額)が一定金額(全業種とも残業代役職手当その他諸手当を入れずに月25万)以下であること、自らの社会関係上、家事上の要請から短時間労働で足りるとしてそれを行っている使用人も含め、理由を問わず、労働関係諸法における最低賃金(現行では低すぎる。時給1,400円位まで引上げが前提であり、急務)以下の者が一人でもいること、非正規雇用の割合が高かったり増大させたり、非正規雇用に切り替えたり、リストラ等を行ったこと、年齢、性別、国籍等により給与金額に差別が見られること、使用人自身が必要であると主張する額と実際の給与金額に隔りがあって、職務内容、労働量からいって賃金が絞られているとみられる事実関係があることのいずれか一つに当てはまり、一定金額以上の内部留保金額(役員報酬名目で流出した利益配当含む)を有していたり、申告書提出日現在、当該申告の対象となる事業年度末までの使用人給与に未払金額がある同族会社、非同族会社が搾取分を一定期間内に利息を含めて現実に支払われない場合に、自由意思の介在なしに留保金課税を課すという方法が考えられる。
当該留保金課税分は、労働者に払い戻される。そんなことをしたら会社はやっていけなくなると経営者は言うであろうが、これは大法人資本家の労働力からの搾取の方便であって、労働債権は、会社の存続よりも優先される、最も優先される債権である。資本家の義務である。
こうした税制を行わなければ、短期の欠損につき、貨幣の量をコントロールしたり、労働者の数並びに総人口、労働者時間をコントロールしたり、賃金を絞り、不況という方便を使って同情を誘い、実は内部留保が厚く経済的には痛くもかゆくもない大法人が課税を免れ、内部留保を拡大するということが続くのである。
既に勘定科目内訳書作成の段階で、使用人一人当たりの人件費の計算は済んでいるのであるから、申告事務の手間がかかる等は言い訳にすぎないであろう。受取配当金の益金不算入の廃止、配当金優遇税制の廃止、相続税100%の実施、隠れ補助金の廃止、国内において納付していない輸出売上に係る消費税の還付の廃止(還付というのは、一旦払ったものが戻ってくることである)、消費税は贅沢品(剰余財産)のみで衣食住に係る費用の消費税を課税しない等も併せて実施すれば、雇用者たるブルジョア企業が支払わなければならない軍人の給料を労働者が支払わされなくて済む。ブルジョア企業は、多大な税金を払いたくなければ、国際競争力の名のもと、軍隊を派遣して、利益を防衛、略奪する行為をやめればよいのである。