株式、公社債、出資金等の譲渡価額そのものが非課税となる(法6、別表第一2)。
有価証券の譲渡があった場合の課税売上割合の計算は、譲渡価額の5%を分母に算入する(令48⑤)。
非課税になる有価証券等の範囲は、次のとおりになる(法別表第一2、令9①、基通6-2-1、令48②、⑤)。()内は、課税売上割合の計算上、分母に加算する額である。
証券取引法第2条第1項(定義)に規定する有価証券
①国債証券(5%)
②地方債証券(5%)
③農林中央金庫の発行する農林債券その他の特別の法律により法人の発行する債券(④に掲げるものを除く)(5%)
④SPC法にする特定社債券(5%)
⑤社債券(相互会社の社債券を含む。)(5%)
⑥日本銀行その他特別の法律により設立された法人の発行する出資証券(5%)
疎外された労働の評価が転嫁された商品の譲渡であるから、経済上は課税仕入れ。
⑦優先出資法に規定する優先出資証券又は優先出資引受券を表示する証書(5%)
⑧SPC法に規定する優先出資証券(5%)
⑨株券(端株券を含む。)又は新株引受権を表示する証券若しくは証書(5%)
⑩証券投資法に規定する証券投資信託又は外国証券投資信託の受益証券(5%)
⑪証券投資法に規定する投資証券又は外国投資証券(5%)
⑫貸付信託の受益証券(5%)
⑬コマーシャルペーパー(CP)(5%)
⑭外国債、海外CPなど外国又は外国法人の発行する証券又は証書で①から⑨まで又は⑫若しくは⑬の実体を有したもの(5%)
⑮外国法人の発行する証券又は証書で銀行業を営む者その他の金銭の貸付けを業として行う者の貸付債権を信託する信託の受益権又はこれに類する権利を表示するもの(5%)
⑯オプションを表示する証券又は証書(5%)
⑰預託証券(5%)
⑱外国法人が発行する譲渡性預金証書(海外CD)(5%)
上記の有価証券に類するもの
①上記①から⑮までに掲げる有価証券に表示されなければならない権利で有価証券が発行されていないもの(5%)
②株式の引受けによる権利並びに優先出資法及びSPC法の規定による優先出資の引受けによる権利(5%)
③合名会社、合資会社又は有限会社の社員の持分、協同組合等の組合員又は社員の持分その他法人の出資者の持分(全額)
④抵当証券(これに類する外国の証券を含む)(全額)
⑤貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権
貸付金及び預金については、利子を分母の額に含める。
資産の譲渡等の対価として取得した金銭債権の譲渡については、分母の額に含めない。
海外CD・CPの譲渡を除く(現先を除く。)は、5%相当額を、国債等・CD・CPの現先は、損益部分(益は加算、損は減算)を分母に計上し、国債等・CD・CPの売現先は、手持ち債券を担保にした資金調達であるとされ、分母に含めないとされる。
非課税とされる有価証券等には、船荷証券、貨物引換証、倉庫証券又は株式、出資若しくは預託の形態によるゴルフ会員権等は、含まれない(法別表最一2、令9、基通6-2-2)。
有償減資による株式の償却は、出資の払戻しであり、たとえ、株式の消却により交付を受ける金銭等の中に所得税法等の規定上配当及び譲渡所得等の収入金額とみなされる額が含まれているとしても、減資に伴う株式の消却は株式が喪失(消滅)するものであるとされ、資産の譲渡に該当しないとされる(基通5-2-9)。
新株引受権は、証券取引法第2条第1項により株券とみなされることから、消費税法別表第一第2号の非課税になる有価証券に該当し、その譲渡は非課税になる法別表第一2、基通6-2-1)。
債券の償還日前の譲渡は、有価証券の譲渡として非課税になる(課税売上割合の計算上、分母の額には譲渡対価の5%相当額を算入)(法別表第一2)。
現先取引は、譲渡として非課税になる。海外CD・CPの譲渡を除く(現先を除く。)は、5%相当額を、国債等・CD・CPの現先は、損益部分(益は加算、損は減算)を分母に計上し、国債等・CD・CPの売現先は、手持ち債券を担保にした資金調達であるとされ、分母に含めないとされる。
(注)この取扱いは、事業者が現先取引について売買取引又は金融取引のいずれかの処理によっているかを問わない。
抵当証券業者による抵当証券(モーゲージ証書)の買戻しは、実際には、債務の弁済と類似すると解され、投資家が行う売戻しは、抵当証券の譲渡に該当しないとされる。
抵当証券の買戻しの例としては、次のようなものがあるとされる。
①抵当証券取引証(モーゲージ証書)に記載された買戻日(満期日)の到来による場合(満期買戻し)
②原債権の存続又は弁済が不確実になったことにより、抵当証券業者が買い戻すこととした場合(満期前買戻し)
③投資家の都合により解約の申出をした場合(中途解約による買戻し)
匿名組合、民法上の組合及び人格のない社団等に対する出資持分は、「その他法人の出資者の持分」すなわち取引法第2条第1項に規定する有価証券に類するものに該当するとされ、非課税になるとされるとする。
匿名組合については、当事者の一方が出資し、相手方がその営業から生ずる利益を分配することを約する契約(商法535条)で、実際には、出資者(組合員)と営業を行う者(営業者)との共同企業形態であるが、外部に対しては商人である営業者だけが権利義務の主体として現れ、匿名組合員は、営業者の行為について第三者に対して権利義務を持たず(商法535条)、匿名組合は、合資会社に類似するが、一種の契約関係であり、組合自体に法人格はないと説明されることがある。
しかし、営業者に経営権はなく、現実に経営しているのは、出資者であって、組合には法人格があるであろう。疎外された労働の評価が商品に転嫁されているのであるから、出資の譲渡は、課税であろう。