国税局資料調査課の調査について、税法学者等の中には、任意調査や強制調査とは別個の第三の類型として位置付ける見解もあるが、れっきとしたいわゆる任意調査であるとされているのであって(罰則によって強制力が担保されているから、正確には間接強制調査である。納税者に受ける受けないの全くの自由意思は存在しない。任意調査なるものは現実には存在しない。納税者の生産関係経済関係から延期を要求することができる調査である。)、そうした見解は誤りである。

資料調査課の調査は、4人~12人位の税務職員が、調査先法人を訪れ、4日程度、質問検査等を行うのであるが、そこで解決しなければ、日をおいて、再度2回程度調査先法人にやってくる。調査を担当するメンバーは、全調査日を通じて共通ではなく、初日にいたメンバーが欠席したり、途中で離脱したり、新たなメンバーが途中で参加したりする。各都道府県に支店があるような法人については、東京本社に3人、大阪支店に2人といった具合に分かれて、質問検査を行う。欠席したメンバーは、調査先法人の取引先や金融機関を回ったり、税務当局に戻って報告打ち合わせ等を行っている。署の調査に比べ、調査の途中で何度も当局の上司と思われる人物と綿密に携帯で連絡を取りながら調査が進められる。

資料調査課の調査は、経理担当者だけでなく、営業担当者も調査が行われている部屋に呼ばれて質問をされる。場合によっては、当時の営業担当者、退職職員にまで接触を試みようとする。ただ、任意調査といっているのであるから、営業担当者は、出張等の予定が入っていれば、その旨を申告して、後日回答をするということもできる。

調査官(正確には実査官)は、署の調査以上に契約書をはじめとする文書の提示を求めてくるが、資料調査課の調査といえども、ブルジョア国家は、行政上のいわゆる任意調査としたのであって、司法審査のような徹底した証拠主義は要求されていない。電話一本で取引が成立なんていうことは、商取引の世界ではザラであるから、きちんと口頭で当時の事実関係を説明し、領収書等により調査官が確認できる関係を構築すれば足りる。

署の調査同様、帳簿資料等及びその写しの領置専有権は調査官に与えられていないから、コピーの持ち帰りを断って、調査の場で資料を書き写してもらうこともできる。調査官は、調査先法人の取引先で得た取引先法人の情報を調査先法人に調査の過程で話すこともありうる。逆に言えば、調査先法人で得た情報漏洩防止を担保する手段がない。

帳簿書類提示の範囲は、強制調査ではないのであるから、税務調査官において税法上所得に該当するか否か確認できれば足りるのであって、営業上の秘密に抵触するような情報に関しては、開示できない旨を説明する必要がある。 持ち帰らないことを前提に資料のコピーを見せるにしても、見たいと言われた箇所さえきちんと納まっていれば、それ以外のところが納まっていなくとも構わない。ましてや見開きでコピーして他の頁まで見せる必要などないのである。税務調査官は、推論できる範囲が狭くなるが、調査官において、取引の相手方、金額、日付等、相手方等に接触するなどして事実関係を確認できる構造を備えていれば税務の場では足りるのである。