税務署員は、税務調査において、帳簿上の問題であると仮説を立てた項目につき、質問を手短に「これは何ですか」とだけ発する。税務署は、納税者が唯心論者であるとの前提で、納税者を馬鹿にして調査に臨む。課税要件に該当する答弁を得られるという効果を期待して、問いは短く質問をする。この点、調査官も唯心論者である。

納税者は、税務署員から問題提起の基礎となる事実関係(納税者が行った経済取引の事実関係とは必ずしもイコールではないから)が与えられず、わからないから、当該経済取引をするに至った全ての経済関係を最初から説明していかなければならなくなる。納税者の答弁が首尾一貫しているか、終始その主張に矛盾点がないかチェックされる。恰も、課税要件に該当するかのような取引に該当するとの前提で質問をする。

ここで納税者が当該経済的関係から離れて力づくで、又は空想(フィクション)により方便を行うと税務署側の想定どおりである。心理ゲームを展開させたら、税務署のペースである。

納税者は、税務署員が事実を調べ、確認する関係資料を提示しているわけであるから、まずは「帳簿の記載内容通りです。帳簿書類を一通り検討してみてから質問してみてくれませんか」と言って、税務署員に問題をさらに具体化させ、特定させ、沢山しゃべらせれば、上記のような展開にはならないであろう。そして、確定しうるだけの根拠がないうちに、恰も課税事実に該当するかのような前提に質問を進めることこそ、経済的関係を離れた空想上の唯心論上の恣意課税である。税務調査官の弱点である。納税者は、ここを見逃さない必要がある。