当社は、創立20周年パーティを開催し、取引先を招待しました。取引先から収受した現金は、法人税法上、交際費の額から控除されるのだろうか。

先ずは、事前に有料会費制であることが伝達されていた場合とそうでない場合に分けて考えてみよう。

事前に会費制であることが伝達されていた場合

パーティに参加して、食材を生産してくれた人、料理を作ってくれた人、会場を設営してくれた人から受けるサービスを享受して、それに対応して商品を返すという経済上の義務が生ずるわけです。また、土地建物は、労働しないので利潤を産まず、土地建物を貸した側が、この土地建物を使用して労働をさせていれば収入を得ることができていたのにというのは、実際労働していないわけですから、貸した側の方便でしかなく、又、実際にも、例えば、パソコンを労働者に貸与した場合に、労働者に賃料を払えということは法律上請求権があるとまでは認められていませんので、経済上賃借料を支払う義務はなく、利潤の搾取でしかないのですが、賃借料を支払う義務がフィクションされて支払を免れることはできません。

事前にパーティが会費制であることが伝達されていた場合は、それによって、主催した側が全額負担するわけではなく、招待されて参加した側も負担する義務が契約上も生ずるので、主催した側の交際費の金額は、パーティ開催に要した全ての費用から、会費として受け取った商品の評価を差し引いた金額となります。

会費を支払ってパーティを参加した側も交際費となります。

会費制であることは、口頭で伝えても、租税は、経済上の義務であるということを認めさせるは、フィクションでしかないわけですから、課税側は、行政職員を使用して書面がないことをもってして、会費制でなかったという実体はありませんから、証拠主義という建前を使えません。

しかし、会費制であることを知っていたか否かは、書面がなければ、実体がなく、経済関係上、支払わざるを得ないものであることが反証できればいいですが、それが難しいのであれば、パーティ主催者側は、会費制であることを書面にしておいた方がいいでしょう。

パーティの主催者側は、そのパーティが「実体あるもの」として認めさせなければいけませんので、領収書そのものは、架空商品ではあるものの、先ずは、パーティ会場や飲食物を提供してくれた側の領収書を発行してもらうことです。

会費を収受した場合には、主催した側が領収書を発行した方が、領収書も架空の商品ではあるとはいえ、発行しないよりは益しではあるでしょう。

チケット制であればどうか。チケットを購入した側が参加しなければ、飲食物を作った人や会場設営の労務、主催者側の労働者が「もてなす」という労働を受けていないわけですから、チケットを買った側は、寄附金ですが、パーティを主催した側は、交際費と雑収入が両建てで計上されるということになると思われます。

チケットを買って参加した場合は、招待された側も支払った現金は、交際費となります。

上記のような考え方は、忘年会のケースやゴルフコンペのケースにも応用されます。

事前に有料会費制であることが伝達されていなかった場合

事前に会費という存在があることが全く盛り込まれていなかったり、無料で参加できる旨が書いてあったりと、事前に会費を請求しないという建前になっていた場合はどうか。

現実には、経済関係を土台にして、祝儀や寸志という名目で、実体はなくとも、商品を提供しているわけですが、そこにパーティ開催に要した費用を負担するしないに、参加者側の自由意思があるかのように「フィクション」されてしまうのです。

裁判例としては、下記のようなものがあります。

交際費等の額とは、接待等のために支出する金額をいい、その支出する法人が現に負担した金額ではないことから、受領する祝金について記念行事費から控除する旨の特別の規定を置いていない以上、たとえ招待者からの祝儀があっても、それを支出したパーティ費用から控除することは認められない。

創業記念パーティに招待した得意先等から、祝儀を受け取った場合、当該祝儀代を交際費等の金額から差し引くことができるか。裁判例は、招待先からの祝儀は、パーティ等のために支出した費用とは切り離して雑収入勘定で受入れを行い、交際費勘定のマイナスとして処理できないこととしている(最判平成3年10月11日、東京地判平成元年12月18日)。

つまりは、課税する側は、パーティの招待と祝儀の支出という2つの交際費等に該当する行為があったとみているのである。課税側は、事前の協議や会則等による会費の徴収とは異なり、当該祝儀を支払わなければならない経済的関係はないから、受け取った祝儀は、交際費等の額から差し引くことはできないものとしていると思われる。 祝儀代名目で支出された現金は、架空商品で、所有主を持たないから、収受した側の資本がパーティ以外に投融資をフィクションすることができるのである。