法人が著しく時価が下落した有価証券をその代表取締役に帳簿価額で譲渡し、法人は欠損金の発生を免れた。つまりは、時価よりも高い価額で、法人から個人に有価証券が譲渡された場合の税務上の取扱いはどうなるか。まず、法人の側の処理は、有価証券帳簿価額相当額につき、借方が現預金、貸方は、有価証券、時価と帳簿価額の差額分につき、借方有価証券譲渡損、貸方受贈益という仕訳を起こす。損と益が両建てで発生し、両者は相殺されて損益は発生しないこととなる。個人の側の処理はというと、時価と買入価額の差額部分については、寄附金ということになるようにみえるが、所得税法に一般寄附金についての定めはない。あくまで買入価額が取得価額であって、買入代価の弁済を行ったにすぎないのである。よって、個人の側にも所得課税の問題は生じない。