世の中至るところに搾取、貧困、差別の問題は存在する。例えば、ロックンロールのルーツについては、ビルヘイリー&ザ・コメッツ「Rock around the clock」が定説のようになってしまい、1951年のジャッキーブレントンの「Rocket88」やDoo-Wopグループのオリオールズであるという説は、少数説に追いやられてしまっている。そして、ロックンロールは黒人のR&Bと白人のカントリーミュージックの融合の産物であるとか言われることがある。
だが、初期のロックンロールと呼ばれる作品群を見れば、それはR&Bそのものであり、カントリーの影響などまるでないといってよい程である。ロックンロールは黒人音楽であり、誰が創始者であるか特定することは難しいが、少なくとも、音楽的に見れば、ビルヘイリーでないことは確かである。
また、上記の言い方は、黒人の世界にもカントリーミュージックやフォークソングの存在があることを無視している。このような例はほかにも山ほどある。例えば、髪型のリーゼントについても、ロンドンのリーゼントストリートの青年がやり始めたのが由来であるといった類のことである。
しかし、本当のところは、リーゼントは、当時、黒人は社会から差別を受けていて、自分たちのカールした髪質を隠し、ワックスやポマードでなでつけて、直毛にしていたのがリーゼントの始まりである。そして、JBのファーストアルバムのジャケット写真であるが、JBの写真ではなく、白人女性の写真である。ジェリーバトラー「Aware of love」、charles brown「Driftin’ blues」等このような例はほかにもある。
また、ビートルズは、ロックンロールに革命をもたらしたというが、1956~1958年頃のアメリカ南部、ニューオリンズ辺りのR&BシンガーやR&Bグループ(例、Fat’s Domino, Dave Bartholomew,Guitar slim,Lee Dorsey,Allen Toussant,Dr feelgood Eddie Bo )においては、ビートルズがやっているような音楽は既に頻繁に見られている。無数のR&BシンガーやR&Bグループの存在は無視されているのか、音楽評論家が無知なのか殆ど取り上げられることがない。プロダクションによる黒人アーチストに対する搾取も相当ひどかったらしく、賃金絞りを題材にした作品も多く見られる。現在でも黒人に対する差別は解消されておらず、貧困と差別ゆえに学校に通うことができず、残された道は軍隊に入隊するしかなく、軍隊が学校教育を担っているという側面がある。