通達の中には「できる規定」ならぬ「できる通達」が見受けられる。代表的なものが、棚卸資産の引渡しの日の判定について、代金の50%以上を収受した日と、所有権移転登記の申請をした日のいずれか早い日とすることができる2-1-2と、役務提供にかかる報酬の帰属の時期を支払いを受ける日と役務提供の完了した日のいずれか早い日まで収益計上を見合わせることができるとする2-1-12である。

税法の規定は、納税者と課税行政庁との関係について定めたものであり、通達は、国税庁長官が税務職員に対して発したいわば執行マニュアルである。よって、できる通達の主語は、課税行政庁であって、納税者ではない。通達は法律ではないから、それによって課税処分を行うことはできないが、課税庁は、その裁量によって、納税者に対して更正処分を試みることができる、更に言えば、長官が職員に対して、事実関係によっては、更正処分を試みなさいという意味である。税理士事務所等は、納税者側に選択権があるかのごとく、通達により処理している例が見受けられるが、納税者に選択権があるという意味ではないのである。かつて、第一次世界大戦中のアメリカにおいても納税者に収益計上を急がせる判決がいくつか見受けられたが、このように収益計上を急がせる通達を見るにつけ、何か緊急に国庫に入れる必要が常にあるのだろうか。