消耗品その他これに準ずる棚卸資産については、下記のような取扱通達がある。すなわち、「消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用を継続してその取得の日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。(注)この取扱いにより損金の額に算入する金額が製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、当該金額は製造原価に算入するのであるから留意する」(法基通2-2-15)。

先ず、消耗品その他これに準ずるの「その他」は、「消耗品」と「これに準ずる棚卸資産」は別個の手段に供される資産である。消耗品は、既往の実績や品質機能等が同種の物の取得から消耗までの期間等から分析して耐用年数1年未満、つまり1年以内に消耗すると予想できるものと「これに」以下は、収益獲得の要請に応じる棚卸資産として事業の用に供される別物である。更に、これに準ずるの「準ずる」とは、大体において則る、若干の修正を要する点はあるが概ね同様である、類似するということを意味する。つまりは、棚卸資産ではあるが、消耗品とは若干の修正は要するが、概ね類似する資産のことを指している。

世間一般に消耗品と考えられているものと棚卸資産の違いとは何か。

物の属性の違いなのか。物には、属性、消費価値、交換価値など元々は備わっていない。人間がそれぞれの物にその属性を与えるのだ。例えば、税務関連書籍において作業消耗品の例として扱われている作業服、潤滑油であっても、販売の用に供することができるのである。

では、在庫計上の有無の判定の際のメルクマールは、何か。

それは、ここにいう消耗品その他これに準ずる棚卸資産が売買契約の相手方に引渡される物品の一部を構成しているか、つまりは、それがなくては、引渡すことができないものなのか否か、又は、成果物の一部を構成しているのか否かによって判定するのである。例えば、卸売業や小売業の場合、野菜であれば、段ボールや包装紙がなくても顧客等に引渡しは可能であるが、化粧品や飲料水は缶や瓶がなければ、顧客等に引渡しができない。包装用ラップであってもカップラーメンや服飾品の中でも虫食いしやすい服飾品等は、包装資材なしに小売店や最終消費者からの要請上引渡すわけにはいかない。よって、野菜を入れる段ボール、包装紙以外は、在庫計上を要するということになる。

一方、製造業の場合、例えば、管工業などでは、請け負った工事の完成物の一部を構成する空調機や換気扇等は金額の多寡に関わらず、在庫計上を有する。養生用のシート、潤滑油、金槌、手袋等は、完成物を構成しないので消耗品等として取得日の属する事業年度において損金として処理できる。

また、消耗品の一括購入は、期間損益を歪める云々論じられることがあるが、事務用消耗品についても、当該会社の広告宣伝チラシ(無償)を作成するの外注先印刷業者からの経済的関係、生産関係、社会関係上等の要請により、一度に大量の用紙を負担せざるを得ずなかった場合などは、在庫計上をしないことが認められる場合があるかであるが、当該会社に外注会社に規定された日までに印刷せざるを得ない土台となる経済関係が存していなければ、印刷会社における引渡し日の収益計上の有無関係なく、在庫に含まれるものと思われる。当該会社に、消費者に配布しなくてもその日までに印刷物の出荷をしてもらなわければならない経済土台があって、現実に印刷物の引渡しを受けていれば、損金計上の時期の早い遅いということにつき、当該法人の経済関係上の事実の存在、確定の問題はあるが、交際費、寄附金といった問題は成立しないであろう。

資本家との経済関係から、資本家は事業承継による生産関係から、何等経済土台なく現金留保を流出することはありえないから、所有物たる法人の自由意思はなく、利益操作の意図の有無は実体のないものであるから問題とはなりえない。当該チラシを有償で配布するのであれば、たとえ不特定多数の者に配布したとしてもそれはれっきとした商品であり、在庫計上を要することは言うまでもない。