法律の規定もない、学者先生や税務署の人間の書いた本にも書いていない取引(経済関係の発展又は停滞は必然である。これは偶発的に起こるのではない。単にそれを立法者や本の著者が知らないだけである)に対してはどう対処するか。人間の意思は、社会関係、生産関係、経済関係等並びのこれら相互の関係等を離れて、独立して存在することはありえないことは何度も述べたが、税法上における費用の考え方も、社会関係、生産関係、経済関係並びにこれら相互からの要請があり、事業を行う上で、必要な、すなわち、やむをえない、避けることができないこと、他にとりうべき手段がないこと等、義務的な支出について発生したものとすることができる。自由意思の介在しない、すなわち、他者としての行為に係る支出が費用に該当する。自由意思である目的や責任から支出するものは、費用とは矛盾する。当該支出を行なわなくとも合理的に事業を行いうるような費用、支出したことによる効果から遡って支出目的を正当化するとみられるような支出については、その目的は方便にすぎないと看做され税務上も否認される余地が大きいといえよう。また、費用性のテストについて、通常性や支出金額の多寡等を挙げる論者も多いが、通常ありえない支出であっても、当該企業にとっては、上記社会関係等からの要請により避けることのできない費用も存するし、社会関係等の要請から多額のコストを要することを避けられない場合もありうる。したがって、費用性判定のメルクマールとは必ずしもなりえない。事業を行う上で必要であるかが、最も重視される費用性のメルクマールとなってくるであろう。