認定賞与という文言は、税法上何処にも見当たらない。納税者の行なった経理としては、賞与として賞与とされていない場合に、課税庁がそれを認定して課税することを認定賞与と呼ばれているにすぎない。
税務の手引きや質疑応答事例集等を見ると認定賞与の例として、数多くの事例が掲載されているが、こうした文献に出ていない、これらの著者が知らない支出についてはどう対処する必要があるのか。
そこで、さしあたりは、①支払う若しくは経済的利益を供与する側において、経済土台を持たない、事業を行う上で必要がない支出及び経済的利益の供与であること、②支出及び経済的利益の供与を受けた者は、その原因となった金銭等経済的利益を社会関係上の要請の内、専ら家事的要請に基づいて処分しうるものであること、③臨時の支出及び経済的利益の供与であること④特定の者に対するものであること。
問題となっている事案について、これらの点に該当するか否かという仮説を立て、検証してみてはいかがであろうか。①から③の何れにも当てはまれば、その後更に詳細に分析すれば賞与として認定されうるものと言える。④については、特定の者が誰かによって、認定のされ方が異なってくると言えよう。特定の者が役員であれば、役員賞与、株主であれば、配当金(交際費とする論者もいるが、配当金であろう。)、取引先であれば交際費、事業に関係のない者の場合には、寄附金として認定されうるであろう。株式を所有しない役員は現実には、使用人であるから、自身の経済関係に基づいて法人に投融資された金を使用することができないから、認定賞与が問題となるのは、役員が株主であって、資本家であるがゆえに、その経済関係に基づいて①~③に当たるかが問題となる。上の①から④は、あくまで、推論する際の便宜として、秩序建て、すなわち類型化しただけで、これだけで問題が解決しうるものではない。納税者側は、さらに、当該事例について分析を進める必要がある。
賞与として認定する権限は、課税庁側にあるのであって、申告調整で加算する前に、納税者側としては、例えば、経理処理時に(支出時の事業関連性の有無についての検討は内部統制上の問題である)、当該支出における全ての側面(諸関係等)を明らかにして、再度、取引先等社会経済関係等の原因に基づく事業上の必要性を立証しうることが可能か、立証しきれない場合には、当該支出等は、速やかに且つ頻繁に精算される仮払金としての支出と言えるか等について分析を進め、検証する必要がある。 前提事実や問題点を全体化せずに検証せずに積極的に申告書上で加算した後で、申告書提出後、税法上加算する必要がなかったことが判明しても、自らの手で加算した以上、調査等が入った場合に税務署員と交渉することは難しく、更正の請求等を行なって取り戻すことを試みることとなるが、それは困難な作業となる。