寄附金課税は、昭和17年の臨時特別措置法の改正で損金算入限度額が定められた。恤兵金(物品又は金銭を寄贈して戦地の兵隊を慰労すること)すなわち戦費調達手段として定められ、当時の企業の実効税率は、臨時利得税を併せて80%を超えていたといわれる。

実際には観念上でしかない国家もその使用人である軍隊もブルジョア体制を維持し、抑圧機構という点では同じであり、軍隊に寄附をすると併せてその支出した金銭の大部分は国家にも徴収されたのである。

現在も大企業は、ブルジョア政党(共産党は企業献金を受け付けていないが、その資本からは受けて、その使用人として自民党、民主党等と手を取り合っている)に寄附金を支出するが、その一定部分は、一般寄附金として課税され、国庫に入ることとなる。寄附金の損金算入限度額は、一般寄附金に限って言えば、{資本金等の金額×当期の月数/12×2.5/1000+(税務調整後所得金額(別表四仮計金額))×2.5/100}×1/2である。損金算入という面では、明らかに大企業有利の取扱いがされている。ブルジョア政党に寄附さえすれば、租税コストを削減でき、内部留保が削減が抑えられる。

下請会社や取引先中小企業にもブルジョア政党に寄附をさせれば、彼らがブルジョア体制の維持コストである税金を負担してくれる。上記下請会社、取引先企業も、ブルジョア政党が賃金絞りを正当化する法案を立法してくれるから、剰余価値は維持できる。喜んで協力する。これらの恩恵を受けられない企業も生活のため、仕方なく協力する。

取引先が怖いから自民や民主に投票する。これは道徳や倫理的な問題ではない。企業は、法律上投票や政治に参加することはできない。経済関係の上層ではあるが、法律に従う従わないに自由意思はない。

企業献金につき税制上の特典を与えるということは、特定政党に企業が投票することと同じなのである。これによって民主主義は形骸化し、大企業主権の社会が形成される。寄附金の問題は、また、オーナー企業の場合、役員報酬という形で富を独占しても、受けた本人は給与所得として課税は受けるが、寄附金の場合、受け取った側が、内国法人をはじめとする税法上の事業者でなければ、課税を受けないという点で、役員報酬の問題とは異なった問題がある。受け取った側も支出した側も課税されないこともありうるのだ。寄附金課税も不平等税制の一つとして挙げることができるのである。