企業の行動は、利益獲得競争が目的ではない。ましてや、利益獲得競争による使用価値の向上など目指してはいない。究極の目標は富の独占であって、競争を勝ち抜きナンバーワンとなり、さらに統合を行い、オンリーワンになって恣に行動することなのだ。
既存の経済関係から次々と既存の他の企業との合併や企業結合を繰り返し、富の独占を企図する。だから、競争により平均利潤が生まれるだとか、長年の実績によりブランドにはその物の属性として価値が備わっているとかいうのは、幻想であって、自らの創設したブランドに価値を与え、価値を認めさせるにはそれを市場価格として現実のものとする必要があり、あらゆる媒介を通じて、市場価格とは、市場において価値を認めさせたという現実にすぎない。税務上適正時価算定の際、平均利潤に固執する必要はない。この点で、独占がみられない市場における市場価格と異なるところはない。歴史や他企業との関係や搾取ー被搾取の関係等生産諸関係を無視して、独占企業の意思決定が企業の利益追求という動機の面ばかりを重視した唯心論的思考を行なうと価格の恣意性を見失う。市場を独占している企業の適正価格は、共時態における比較対象が存在しないだけに、尚更、その歴史を分析し、十分に仮説を立て推論を行なって検証するという作業が必要となってくる。勿論、交換が前提となる棚卸資産の価値なのでその使用価値は考慮する必要はない。