出精値引きは、調査等の場でその原因について明確に説明できないと、調査官は、明確に説明できない値引きを出精値引きとしてとらえているので、交際費として認定したがる。
では、出精値引きの合理的な理由とは何か。法人税法上、出精値引きについての規定がないので、私見としてであるが、合理的理由の例として考えられるのは、当該取引の値引金額の算定過程、すなわち、当該取引に係る期待収益の見直し、並びに、原価計算及び販売コスト・管理コスト等の見直しを「合理的」に行なった結果であることが説明可能で、事前に口頭ないし請求書等において通知されていること等が挙げられる。
国際金融資本の代理人である税務行政は、証拠主義をフィクションしているのではないから、仮に請求書に値引金額総額だけ記載してあって、請求書記載中の各取引との対応関係いわゆる「ひも付き」関係が不明確であって、仕入先等で、個々の仕入金額に応じて値引金額が按分される経理が行なわれうる(法律ではないが、法人税通達ー署内の指導マニュアルであるが、いわゆる学識経験者の意見を考慮に容れて一応の客観性を担保している。ーは、一つの例示として、これを認めている)場合には、算定根拠が企業内部に存在し、口頭で相手方に通知していることが必要になると思われる。
値引きの算定根拠が明確であるなら、契約の解除等に当たるわけであるから、法人税基本通達のいう前期損益修正として、税務上契約の解除等があった日の属する事業年度の損金として認められうるのではないか。
もう一つ考えられるのは、出資割合等を別途考慮しなければならない建設業界等のジョイントベンチャー契約等は別として、複数の企業が参加し、例えば、向こう1年間の複数の一連の取引を一組の取引としてとらえ、年間契約や作業予定表等によって、当該取引の見積書の所得総額を、各参加企業の果たす役割や負担しなければならない損失の評価更に義務としての実体化に応じて合理的に定められていて、仮に値引きを行ったことにより、年間契約書等記載の個々の取引の中に赤字若しくは低い利益率のものがあったとしても、年間契約書等トータルで判断してみれば、類似の取引の利益率等と比較して著しく乖離したものでなければ、また、乖離していることに経済関係上の理由や特殊事情があれば、値引きとして認められる余地がありうると思われる。
ただ、談合的にお手盛りで所得配分がなされていれば、または、何ら役割や損失を負担しない者に対して値引きが行なわれても役務の対価としての価値を付与することはできないので、税務上損金となる値引きとして認めさせることはできないであろう。